サン・テティエンヌ・デュモン教会 パリ唯一の”ジュベ”の話
ヨーロッパを旅して訪れた数々の教会の中で、
今もなお最も印象に残っているのは、ミュンヘンのフラウエン教会。

装飾は控えめで、天井は高く、やわらかな光が白い壁に反射して、
静かであたたかく、それでいて荘厳な空間だったのをよく覚えている。
そんな中、今回訪れたサン・テティエンヌ・デュモン教会で出会った“Jubé(ジュベ)”には、
また別の意味で、心を揺さぶられた。

ジュベとは、聖職者と信徒の空間を隔てる石造の構造物。
本来は、聖職者が朗読や儀式を行うための高所の講壇として使われ、
「天と地」「俗と聖」を分かつ中間領域の象徴でもあるという。

フランス革命以降、その多くが破壊・撤去される中、
この教会のジュベは奇跡的に残された、極めて貴重な存在。
そう思うと、その佇まいはいっそう神秘的に、荘厳に感じられた。
繊細なレースやリボンを思わせる左右の螺旋階段。
その先に渡された橋は、石とは思えないほど柔らかく、しなやか。
彫刻はどこまでも緻密で、人物の表情から小さな装飾に至るまで、
一つとして手を抜かれたところがなかった。

これまでに、どれほど多くの人々が、
どんな思いを抱えて、この場所を訪れたのだろう。
救いを求めて、祈りを捧げてきたのだろう。
そう思わずにはいられなかった。
ステンドグラスも、天井も、パイプオルガンも、
扉の内にあるすべてが、まるで工芸品のようだった。

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