BOUILLON CHARTIER リベンジした話
パリで一日外出すると
外食で嵩む出費の壁にぶつかる。
どんなに小ぢんまりしたビストロでも、
メイン料理だけで一人25€前後は覚悟しておきたいところ。
そんなパリでの救世主が
“BOUILLON CHARTIER”(ブイヨン・シャルティエ)だと思う。
“パリらしい雰囲気でフレンチを楽しめること”と、
“お財布にやさしいこと”が、ちゃんと共存している。
そんなお店は、そう多くはない。
創業は1896年。
本店は歴史的建造物にも指定されていて、店内はアール・ヌーヴォー調。
どこを見てもクラシックで、だけどどこか親しみやすさも残る──
“高級ではない、けれど本物”な空気がある。

メイン料理で一番高くても12.9ユーロ。
グラスワインも、ソーヴィニヨンなら3.9ユーロから楽しめる。
ただ、今回足を運んだのには
もうひとつ理由がある。
新婚旅行でも訪れた”BOUILLON CHARTIER”
そのときの苦い思い出を塗り替えたくて・・・
オレンジ色のランプが灯る、少し薄暗い店内。
その店内の雰囲気そのものが、
このビストロの魅力でもある…
わたしも、この空間ごと食事を楽しむのを心待ちにしていたのに
案内されたのは、トイレの扉がすぐ横にある席だった。
トイレの扉を視界にうけながら、
先に見える、賑やかであたたかな店の中心部。
”あちらの席で食事ができたら…”
そう思いながら、そっと下唇を噛んだ。
ただ、店内もかなりの混雑、お店の外にも長蛇の列ができていたので
“運が悪かった”と思って納得したつもりだった・・・
けれど、日本に帰国してから、
あれはもしかすると、人種によるささやかな忖度だったのでは…と考えるようにまでなってしまった。
せっかくの美味しい食事の思い出が、少し曇って見えた。
あれから2年。
もう忘れていたと思っていた、
“わたしもあちらの席で食事ができたら……”という心の声が
自分の中に、まだ静かに残っていたことに気づく。
そして確かめたくなった。
あれがほんとうに「勘違い」だったのかどうかを。
再訪した日も、変わらず長い列ができていて、
順番が来るのを静かに待つ。
Maître d’hôtel(メートル・ドテル≒案内係)になぜか一旦、横の待ち椅子へ通され、
また同じ展開になるのでは…少し肩を落としかけたそのとき、
「どうぞ」と声をかけられた。
夫とふたりして、
どうなることやら…と目で会話しつつ、
通されたのは、
かつて“わたしもあちらの席で食事ができたら……”と願った、まさにその席。
夫もわたしも思わず、よかったね…と声に出してしまうほどだった。

頼んだ食事は、
・6 Escargots 7.5€
・Blanquette de veau, riz 11.5€
・Saucisse de l’Aveyron, purée 9.8€
ふたりして気分が良くなり、
メイン料理とともにグラスワインも。
・Cinsault IGP Pays d’Oc (Rosé) 3.5€
・Sauvignon – Vignes Antiques 3.9€

そして忘れもしない人生初のエスカルゴ…
隣にいたオーストラリア人ファミリーが、
やや怪訝そうな表情でこちらの“初エスカルゴ”を見守っていたのがおかしかった。
そのママいわく、“Taste is bad.”
わたしたちとしては、
「この料理は別に、カタツムリでなくてもよかったのでは…」という疑問が生まれたのがおもしろかった。
”貝でもよさそうだし、むしろ貝の方がいい…”というのがエスカルゴ素人の感想である。
二度目があるとするならば、
フランス移住の終着点が見え始めたとき、忘れないように・・・と願って食べるだろうと
夫と会話した。

でもひとまず、そんな細かなことはさておき。
とにかく、“BOUILLON CHARTIER”らしい、
あの空間で、食事をまるごと味わえたこと。
それが何より、うれしかった。

あの日の思い出は、
いまやすっかり、快晴に変わっている。
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